「忘れない。あなたのこと。あなたと過ごしたこと。出会えたこと。

大切に、するから」

 ひとの記憶は、いつかきっと消えて行く。

 だから、保証なんてできない。いつまで覚えているかなんて、わからない。

 それでも。

「忘れない」

 私がそう思っている限り、決して忘れない。

 それが、私にできる唯一の約束。

 彼女と私を繋ぐ、唯一のもの。

「・・・うん」

 花夜は、頷いた。

「うん」

 思い切り、頷いて。そう、呟いた。

 ――約束。

 ――記憶だけが頼りの。

 花夜は、そのままの体勢で呟く。

「・・・思い出してくれるだけで、よかった。最初は。

だから、深夜に頼んだ。

でも。

やっぱり、あなたに会いたかった。

自ら命を落としたものは、死後、この世界へ来る事は許されない。

でも、私は・・・ここへ来た。

来世の私を、引き換えにして」




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