草に蝕まれそうな、けれど確かに存在する小さな石の階段。

 そこには、ひんやりとした――深夜の手が持つ雰囲気と、よく似たものがある。

 どこかへ導くような、誘うような階段。

「瑠叶ちゃん?」

 階段の手前で足を止めた私に、深夜が振り返る。

 小さく首を傾げ、邪気のない笑みを私に向ける。

「行こう」

 暫く、何かに――私にもわからない何かに躊躇った後、私は、彼女について行く。

 繋いだままの手はやはり、ひんやりしていた。

 そうして、階段に足が触れるかというその時に。


「だめ!!」


 叫びにも似た少女の声が、

 響いた。




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