それは、深夜によく似た声だった。

 けれど、少しだけ響きが――持つ雰囲気が違っていた。

 深夜は――静かに広がる、澄んだ声。

 その少女は――優しく包む、温かい声。

 どちらも、よく似ている。聴き間違えてしまいそうなくらいに。

 けれど、私が。私の記憶を呼び覚ましたのは。

 記憶にかかる霞を消し去ったのは。




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