「あ」 小さな呟きを、深夜が漏らす。 「戻ってきちゃった」 そこは、最初に私達がいた、白い花が散らばる草原だった。 淡い色の緑と白は、さやさやと流れる風に小さく揺れている。 それは、とても綺麗で、懐かしい光景だった。 私の奥底に沈んだ記憶を呼び覚まし、再現するかのように。 隣の少女に、目をやる。 深夜は、少しばかり周囲に視線を巡らせて、考えるような素振りをしてから―― ゆっくりと、私の手を引いて歩み出す。 小さな白い花と草をかきわけ、草原の向こう側を目指す。 そこには、どこかへと下る階段があった。 |