「後悔なんてしないの。私の来世はないけれど、あなたに会うことができたから。

本当に、よかったと思ってる。

あなたに出会えて、よかった」

 その言葉は、とても、とても嬉しかった。

「私も、花夜に出会えてよかった。

会いに来てくれて、ありがとう。

――嬉しかったよ」

 花夜の記憶をなくしつつあった私が言う台詞では、ないのかもしれないけど。

 嘘偽りはない。

 そう言い切れる。

「ありがとう」

 花夜は、微笑む。

 あの時と同じように。

 私は、そっと手を差し出す。

「約束」

 花夜と私の手の、小指同士を組み合わせる。

「あなたのこと、絶対に、忘れない」

「私も・・・忘れたりなんかしない。

ずっと、大切だよ」

 最初で最後の、約束。

 ずっと途切れることのない、約束。

 強く結んだ小指。

 指切りをした手を、花夜はそっと離す。

「行かなくちゃ」

 悲しそうに、それでも精一杯、微笑む。

 そっと、優しく、何かを想うように。

「ありがとう」

 その言葉を残して、花夜の姿は、だんだん薄くなって、消えて行く。




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