幼い頃の記憶というのは、そう簡単に消えるものではない。

 例えば、遊んだ場所だとか。

 例えば、眺めた風景とか。

 例えば、小さな出来事とか。


 そんな破片のような記憶達は、その主が忘れてしまっても。

 どこかで、眠っている。

 そして唐突に、目覚める。




 それは、唐突に訪れた。

 何度目かに訪れるこの地に辿り着いた時、そんなことが待っているとは思いもつかなかった。

 一本道の先には、木々の間に潜む別荘。

 観光地のざわめきからは遠く離れ、静かに佇む様は変わっていない。

 薄青の屋根、白い壁、緑に触れそうな小さなベランダ。

 親戚間で共有している別荘で、記憶は曖昧なのにどこか懐かしさを覚える。

 幼い頃に訪れた、軽井沢。

 そこへ私は、再び、やって来た。




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