薄暗い風景の中に、いくつもの滴が落ち始める。

 灰色の空に包まれるようなこの帰り道は、とても寂しい。

 こんな時は、なおさら。


 後悔してない。

 私から、別れを告げたこと。


 するはずがない。私が決めたことだから。

 わかっていたから。

 だから、選んだ。

 別れを告げられるより先に、自分から告げる、という道。


 逃げたとは思っていない。

 遅かれ早かれ、別れは来るものだったのだから。

 貴方が何を思っていたのかなんて、わかっていた。


 私に出来る精一杯のことだった。


 心のどこかでは、思っていた。

 まだ、ずっと、この先も、一緒にいられるんだと。

 けど、そんなのは夢でしかなかったのかな。



 滴は私の頬や髪や、服や鞄、全てを濡らしていく。

 このまま、何もかも洗い流してくれればいいと思った。

 私の中で蠢く感情も、この涙も。

 今ならきっと、泣いてもわからないだろう。

 雨は、そんな私に追い討ちをかけるように降り注ぐ。

 けれど、泣かないと決めたから。

 どんな道だとしても、別れを告げたのは私だから。

 だから、受け入れなければならない。



 寂しいね。

 とても、とても。

 冷たくなっていく。

 貴方がいなくなった私の心は。


 貴方にはもう、すぐ隣に別の人の温もりがある。

 けれど、私はどうしたらいいの?


 別れを告げたのは私。

 強がっていたのは私。

 本当は、貴方が思っているほど、別れを受け入れてないんだよ?

 出来るものなら、あの時に戻りたいくらいに。

 思い出をまだ、手放せないくらいに。


 想いがまだ、ここに残っているから。





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