レーザーアート
本サイトは,管理人(?)が以前所属していた川越高校物理部レーザー班での活動を参考に,
高校の文科系部活動や大学のサークルで,レーザーアート(=レーザーショー)を,機材の
製作からデータの作成まで実施するお手伝いをすることを目的とします。
物理部レーザー班は、今でもなかなかやっている人がいない,レーザの光跡自体でで映像作品を
構成するシステムを独自に開発していました(普通に考えてバケモノですね…)。レーザーショー
といえばいまでもメインである作品をサポートして花を添える使い方がメインですが,レーザを
メインにした点で画期的でした。
で…これをやってみようと思っても,レーザーアートの自作については元々情報が少なく,
作っていらっしゃる方もかなり専門的な方で素人が真似するには厳しいと思います。本サイトを使って,
中学生~大学生が,文化祭やイベントでレーザーアートを披露でき,製作を通じて工学の基礎を
身に着けられるような使い方をしてくれると嬉しいと思います。(プログラム等開発中のものもあるため、
順次更新します)
もくじ
原理
ハードウェアの製作
ソフトウェアの製作
データの製作
戻る
原理 …レーザでどうやって絵を描く?
レーザとは?
レーザーとは,「Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation」の略で、波長が
一定の光を指します(by wikipedia)。
なんのこっちゃい。
光は電磁波,つまり電波の一種です。今我々が見ている光は「携帯電話やテレビで使っている電波が,
たまたま目に見えるための条件を満たしている」ものです。目に見えるかどうかを決めるのが,波長です。
波長とは,光を波として書いたときに,1周期波が振動するのにかかる時間のことです。

電磁波が目に見える(=光として人間に認識される)には,この波長がおおよそ400nm~700nmの間にある
必要があります。ちなみに,nm(ナノメートル)は10のマイナス9乗メートルです。恐ろしく小さな単位です。
で…
人間の目には,波長が違う光は色の違いとして認識されます。色と波長の関係はおおよそ以下の図のような
関係になっています。

なお,波長が400nmよりも短い光を「紫外線」,700nmより長い光を「赤外線」と言います。
紫外線よりもさらに波長が短くなると…X線,つまり放射線になります。ちなみに,波長が短くなれば光は
たくさん振動していることを指しますので,波長が短い光ほどエネルギーは大きくなります。
話をレーザーに戻しましょう。レーザーとは,この波長が1種類しかない(波長が一定な)光
のことです。太陽の光を含め,普段我々の周りにあふれている光は,様々な波長がごちゃ混ぜになっています。
一方,レーザーの光は1種類の波長しか含まれていません。
波長がひとつしか無い利点として,レンズ等で集光し,一定の大きさにしてしまえば,ずっとに同じ大きさの
光のままになる点があります。
この利点として,理論上はどんなに長い距離を伝播させても光が大きくなったり小さくなったりせず,同じ形を維持できる
ことがあります。
ちなみに,よく見るレーザのイメージって、光の線がどこまでも飛んでいく「例のアレ」ですよね。あれは,空気中にある
小さなゴミや水滴の粒子にレーザの光が当たることで,光の線に見えるんです。
レーザーアートとは?
レーザーアートは,レーザーの「どんなに長い距離を伝播させても光が拡散せず,同じ形を維持できる」特性を
うまく使用した技術です。レーザーアートでは,以下の図のように,90度の角度を持って配置された鏡にレーザーの
光を当てます。

鏡には高速で動作するモータが取り付けられています。これにより,鏡を任意の角度に回転させることが出来ます。
この,高速で動作するモータを取り付けられたミラーのことを,ガルバノメータミラーと言い,レーザーアートには
必須の装置です。
このガルバノメータミラーをコンピュータで制御すれば…レーザーを自由な場所に照射することが出来ます。
で…ミラーを高速で動かすと…点が残像で線に見えて…

はい線を描くことができました。さらに鏡を高速に動かして,残像を作っていけば,一筆書きで自在に絵を描くことが
出来ます。これがレーザーアートの原理です。
ハードウェアの製作
レーザーアートを行うには,大きく分けて,「光源となるレーザ」「ガルバノメータスキャナ(ILDAなんていう人も)」 の2つが必要です。では、作っていきます。
レーザ光源

レーザアートに必須なもの,それはレーザー光源です。レーザというとまず思いつくのはレーザポインタ
でしょう。ですが,レーザアートの光源としてレーザポインタを使用することは出来ません。
正確に言うと,使うこと自体は出来るのですが,それなりの改造が必要です。その改造とは…
1)電源を電池からAC電源に変える
2)常に安定した発行を得られるようにする
3)発熱対策
です。レーザポインタは電池が電源です。レーザアートの投影時間は数分から数時間。とても電池では投影し続けられません。
AC電源は必須です。そして,レーザーは連続で投影すると結構発熱します。適宜放熱対策をしなければ焼けてしまいます。
光源の入手
レーザアート用として,改造可能な実験用レーザモジュールを入手します。ただし…注意してください。これらはあくまで
実験用です。普通のポインタにあるような安全装置は一切ありません
そして,実験用のレーザはレーザポインタよりずっと強力です。そして,実験用ですので何があっても
自己責任です。ですので,以下のことは絶対に守ってください。
1)レーザ光を絶対に目に入れないようにする(必要に応じてレーザ防止めがねを着用する)
2)レーザ光の行き先を必ず光沢の無い板(黒いつや消し板が望ましい)でブロックする
3)レーザ光が極力体に触れないようにする
以上を絶対確実に守ってください。例外はありません。以上を承知した上で,以下の
入手先(これらが比較的手に入りやすいです)から光源を入手してみてください。
□ 共立電子・赤色レーザ
□ 共立電子・緑色レーザ
□ 秋月電子・赤色レーザ
□ 秋月電子・緑色レーザ
光の三原色として,青色レーザも欲しいところですが…残念ながら国内では入手できません。eBay
などで入手するしかありませんが,当然保障も何もありませんので,レベルは格段に上がります。まずは上記の一般的な
入手先から入手するとよいでしょう。以下は知っている人向けです。きれいな光が出ますが,使い方は自己責任です。
5~50mWくらいがレーザーアート用としては使いやすいです。
□ ebay ブルーグリーンレーザ
□ ebay 緑色レーザ
電源基板の製作
モジュールは電圧を加えればレーザが発光する…だけのものです。そして,レーザモジュールは非常にデリケートです。
電圧変動や電流変動,熱にも弱いです。そこで,レーザモジュールに必要なときに一定の電圧を加えてあげる電源を製作
する必要があります。
電源の製作には,3端子レギュレータを使用するのが一番簡単です。上記のレーザモジュールはすべて3.1V~3.3Vの電圧で
動作しますので,レギュレータは出力電圧が3.3Vのものを選びます。また,レーザモジュールは大電流を必要とします。赤色
レーザでは500mA以上,緑色レーザでは1A以上の容量を持つレギュレータを使用するとよいです。ん?わかったから回路を早
く? ・・・・・・わかりました。以下に私が緑色レーザに使用している駆動回路を示します。

レギュレータICはPQ3RD23を使用しています
レーザモジュールに安定した電圧電流を与え,電池とACアダプタの両方で使用可能,そして動作をLEDで確認できるように工夫
しています。3端子レギュレータには必ず放熱器
を取り付けてください。また,ebayで売っている緑色レーザは発熱が大きいので,放熱器付きを選んでください。
ガルバノメータスキャナの製作

レーザースキャナは,光源からのレーザー光を,ガルバノメータミラー(Galvo mirror)と呼ばれる高速で動作する鏡に
あてることで,レーザー光の方向を制御し,スクリーン上にレーザー光の航跡を描くことで「光の絵」を作る,レーザー
アートの中核となる装置です。
中核となる装置のため,中身は非常に複雑で,特にガルバノメータミラー部は高度な製作精度を要求されます。
一部のすごいひとはこれら全てを自作していますが,
一般人(や学生)がこれを製作するのはほぼ不可能です。
したがって,今回はガルバノメータミラーについては市販のモジュールを使用します。
スキャナモジュールの選定
ガルバノメータミラーなんてものはどこにも売っていません。基本的にプロ用の機材ですので,なかなか手に入らず,
あったとしても高価な場合がほとんどです。秋葉原でもほぼ見かけることはありません。
そこで,・E-bayなどの海外の通販サイトを利用します。海外の通販サイトですので
勿論言語は英語ですし,クレジットカードも必要ですが,
ほかでは手に入りませんのでしょうがありません。
価格も性能もいろいろなものがありますが,一番安価なものでも十分な性能を有していますので,一番安価なものもで問題ありません。
E-bayにはレーザースキャナキットが複数出品されており,価格も安いです。ただし,保障はありませんのでご注意ください。
「laser scanning galvo ILDA」で検索するとお目当てのキットに当たります。
ここで,ポイントとなるのはILDAとかかれているものを選ぶことです。ILDAはlaser showを実施するための
統一規格で,これに対応していると何かと便利です。
以下あたりが良いでしょう。周波数は=スキャナの性能ですので、予算に応じて周波数の高いものを選ぶと良いです。
□ 例1:20kHz
□ 例2:25kHz
□ 例3:30kHz
ドライバ回路の製作
上記で販売されているキットは,一応単体でもスキャナを作れるようになっています。

ガルバノメータミラー×2(垂直方向/水平方向)
今回最も入手したかったミラー部分です。

アンプユニット×2(垂直方向/水平方向)
ミラー駆動用のアンプです。付属のケーブルでミラーと接続すれば,取り合えず最も調整や製作が難しいスキャナ部が完成します。

ILDAコントローラ
コントローラです。コントローラの中にはあらかじめレーザアートのデータと駆動用プログラムが書き込まれており,アンプユニットと
接続するだけで一定のレーザーアートを楽しむことができます…が,今回の目的は「自分で描いた動画をレーザーアートにする」ことなので
使用しません。勿論使用して絵を描いてみてもOKです。
ベクトル出力回路の製作
レーザスキャナを使用して自分が書いた絵をレーザで描くには,コンピュータ内に記録された絵の情報をスキャナに伝えなければいけません。
通常ですと,USB接続の機器を製作し,専用のプログラムを書き…となりますが,プロならともかく普通の人にはハードルが高すぎです。
では,もっと簡単にできないか? 当時川越高校物理部の先輩方が考えたひとつの結果が「PCのオーディオ出力を使う」
ことでした。
オーディオカードから出力される音声信号は,256の階調を持つ電圧信号です。現代の機器はほぼ全てステレオですので,256階調×2チャンネルの
信号を使用できます。この電圧信号を適切に変換してレーザスキャナのX(水平方向)とY(垂直方向)に与えてあげれば……? はい,PCで
音楽を再生するだけでレーザーアートをコントロールできてしまう,というわけです。
とはいっても,PCのオーディオカードの出力をそのまま使用することはできません。何故なら,オーディオカードの音声出力は
「人の耳に心地よいように音楽を再生する」ために設計されています。しかし,今我々がほしいのは「レーザスキャナ
を正確にコントロールするための信号」です。よって,PCのオーディオカードをこれに適するように改造する必要があります。
とはいえ,市販のUSBオーディオを改造するのは大変…という人のために最適なキットがあります。それが…
USB DACキット(秋月電子製)
です。これなら組み立て式ですので,必要な部品を取り付け,いらない部品を取り外すのは非常に簡単です。
で…どこの部品を交換すれば言いかというと…

秋月USB DACキット改造箇所
このように改造します。ね、簡単でしょ?ほかの部分は説明書通りに組み立てればオッケーです。
さて,写真の改造がどういう意味があるか? といいますと,「オーディオ出力側に取り付けられたカップリングコンデンサを全て取り外した」
となります。オーディオ機器には通常,より良質な音を得つつ,かつスピーカやアンプの接続によってオーディオICの破壊を防止するために,カップリングコンデンサと
呼ばれるコンデンサが取り付けられています。理論的なことは省きますが,簡単に書くと,スピーカはコイル(=インダクタンス)でできているので,それに対応する
キャパシタンス(=コンデンサ)が必要になるため取り付けられている…と考えてください。レーザスキャナにはスピーカのようなコイルはありませんので,
これらのコンデンサは不要,ということです。ほかの部分はそのまま組み立てればOKですが,出力はオーディオではなく,レーザースキャナに信号を与えるための
アンプに接続しますので,付属のオーディオ端子ではなくリード線を接続するといいと思います。
作動増幅アンプの製作
続いて,ベクトル出力回路からもらった信号を,レーザスキャナキットが理解できる信号に変換するための,差動増幅変換+アンプ回路の製作です。先ほど製作した
ベクトル出力回路の出力(音声信号)は,次の2つの問題からそのままスキャナに与えることはできません。
1)ミラーのコントローラに入力できるのは差動信号である
2)ミラーのコントローラに入力する信号は最大±5Vである
1)差動信号を作る
差動信号…というのは,ある信号とある信号の電圧の差をデータとして取り扱う,信号伝達形式のひとつで,基準となる信号にノイズが混入しても,信号と信号の
電圧差さえ維持できれば確実に信号を伝達することができる方式です。で…勿論オーディオ信号は差動信号ではありません。よって,こーんな回路

を使用して通常信号を差動信号に変換してあげればオッケーです。実はこの回路,差動信号を作ると同時に,信号の大きさを約6倍に増幅できちゃう便利な
回路だったりします。
2)信号を増幅する
ベクトル出力回路からの出力信号は最大0.6V程度と非常に微弱です。したがって,レーザスキャナキットが認識できる5Vの電圧まで増幅してあげる
必要があります。(1)の差動回路でも信号増幅はできますが,下の信号が小さいためとても足りません。信号の増幅は,オペアンプを使用して,こーんな感じ

の回路でオッケーです。
で…これらの回路を組み合わせて実際に増幅回路を作ると…こうなります。

ユニバーサル基板で作れるように,コンパクトにまとめてみました。おかげでリード線を何本も使用する裏面のきっちゃない回路になってしまいましたが…。
なお,ここで使用した部品は全て秋月電子で手に入ります。がんばってみてください。