こ の 世 界 は
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あの子は少し可哀相なだけなんです
気持ちを読むことが人より少し苦手なだけなんです
だから赦して下さい、赦してやって下さい、どうか・・・

私は必死で娘の罪の許しを乞いました
自分が代わりに罰を受けられるならそうしたいと願いました

しかし誰も娘を許してはくれませんでした
私の願いも受け入れられることはありませんでした
娘の罪はそれほどまでに重く 罪深いことでした

あぁ、主よ どうか娘だけは助けてあげて下さい
あの子には何の罪もないのです あの子はただ無邪気で純粋なだけなのです
本当に罪深いのは あの可哀相な子をこの世に産み堕としてしまった愚かな私なのです

このままではあの子は可哀相です
何の罪で裁かれるのかも分からないというのに
あの無垢で優しい子が苦しみに焼かれて消えてしまうなんて !!

なんて可哀相な子 可哀相な私の娘 まだ年端も行かぬ子だというのに
どうして幸せも知らぬまま逝かねばならないのでしょうか?

気が付くと私は我を忘れて一人悲しみに暮れていました
本当に可哀相なのは何も知らぬあの子だというのに
そのことを忘れ、いつしか自分だけの悲しみに囚われ支配されていました

次に気が付いた時、あの子はいつの間にか私の隣に座り
私の頭を撫でながら弱々しく、けれど強く柔らかに微笑んでおりました
私は可哀相な子なんかじゃない、幸せ。だからお母さんも幸せなんだよ、と。

だから私はあなたを生んでしまってごめんなさいの代わりに
生まれてくれてありがとうと言い、あの子も生んでくれてありがとうと返しました
愛させてくれてありがとう 愛してくれてありがとう さようなら・・・

この世界は何と罪深いのでしょう。けれど優しい愛に満ちている。


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コメント:あなたが悲しいと思うことは本当に悲しいことだけで造られているのでしょうか?


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