![]() -------------------------------------------------------------- ヒグラシが鳴き声が響き渡る八月の終わりごろ 彼の眩しすぎる笑顔を思い出す あの日、私は彼を待っていた 彼から突然呼び出され、夏休みで誰もいない学校に一人 何の用かわからないけど、ただ胸がドキドキして止まらなかった いつもみんなの人気者でクラスの中で一番輝いてる人 隣のクラスだし、全く話したことがない相手 ・・・彼は私の憧れだった あの時もそう、ヒグラシが鳴いていて 私はその声を聞きながら、まだ暑い日差しの中、木陰で彼を待ち続ける “彼と話せるんだ” “何の話だろう?” “他に何か話せるかな” そんなことばかり考えている時間はそう退屈でもなかった けれど、何時間経っても彼が来ることはなかった 家に帰ってみても、彼から連絡が来ることはなかった 何度か自分から電話をかけてみようかとも思ったが 結局電話をかけることはできなかった “何か用事でも入っただけかも” ”もしかして嫌われたのだろうか” 答えの出ない考えで頭がいっぱいになる ・・・始業式の日まで彼のことは考えないようにした それから数日間は何事もなくいつものように過ぎていき 夏休みの終わりの宿題にただ追われる日々が続いた 始業式当日・・・・・彼が交通事故で亡くなったことを知らされた あの日、私が学校で待っていた頃 待ち合わせの時間に遅れ、自転車に乗り慌てて家を出て 通りに出た彼をトラックが轢いてしまったのだ 運転手はすぐに救急車を呼んでくれて、病院に運ばれたようだが 医師の努力もむなしく、数時間後、息を引き取ったという・・・ ・・・・結局彼が私に何を伝えようとしたのかは分からなかった それから数日間、私は喉に食事を通すこともなく ただ学期の始まりの退屈な時間をぼんやりと過ごした 私もまた、彼に伝えたかった言葉を言うことは永遠に叶わなくなったのだ 毎年、彼の命日。 夏の終わりにこの樹の下に訪れる こうして彼のことを夏になったら思い出してあげることが 私が彼のためにしてあげられる唯一のことだと思うから・・・ 今年もまたヒグラシが物悲しげに八月の終わりを告げ、命を散らしていく --------------------------------------------------------------
コメント:ヒグラシの声って美しく儚い感じがします、あなたは誰かの心に何か残せますか? ▽前頁に戻る Copyright(c)emiemi 2002-2005 All rights reserved.
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