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Snow Destiny
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SNOW DESTINY vol.1「ここで逢えたね」 ・・(テキスト版)・・
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多分、10年くらい前だと思う
僕は、この町にいた
僕の隣には、いつも、一人の少女がいた
家も隣で、気がつくと友達になっていた
お互い、両親が忙しかった僕たちは、自然と、いつも二人っきりだった
そのころ、父親の転勤話が持ち上がった
東京本社への、出世だ
…当然、僕ら家族は、一緒に東京へ行くことになる…
それは、僕と少女の、別れを意味した
何か、求めるような、別れ際の表情
これから、一人になることへの不安
「また・・ね・・」
少女の言葉が、今もよみがえる
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…でも、少女の表情が忘れられなくて
…その言葉が、忘れられなくて
僕は、この町に戻ってきた

SNOW DESTINY vol.1「ここで逢えたね」

「ふう、ようやく冬休みか・・。」
僕は、講堂の前で大きく伸びをした。
大学は高校までと違って、前期と後期の2期制だ。よって1期が長い。
その長い2期目も終わり、ようやく開放となった。
そしてそれは、僕がこの町にきた理由の再開を意味した。

何年前だろうか。僕は、この町に住んでいた。
そのころ、いつも隣にいた少女。
僕の後を、いつも追いかけて、僕のことを、いつも信じていた。
でも、僕は引っ越さなくてはならなくなり・・・。
少女とはそれっきりだった。
顔もおぼろげにしか覚えていない。
声も思い出せない。
しかし、何かが、忘れられない。
そんな思いに駆られ、僕は、この町に戻ってきた。

学校から僕の住んでいるアパートまでは意外と遠い。
山の中腹にある学校から、坂を下っていく。すると、大きな国道に行き当たる。
ここは冬になっても雪を溶かす設備があるので、雪が積もることはない。
国道を駅のほうへ向かってまっすぐ、すると、左に商店街の入り口がある。
ここは地方都市子からにらしからぬ大きな商店街で、たいていのものが手に入る。
駅前から5件目の鯛焼き屋は、あんこが多くてお勧めだ。
僕はここを右に曲がる。こちらは住宅街に向かう少し細い道だ。
これをまっすぐ行くと、橋に行き当たる。
それほど大きくはないが水がきれいなので有名な川だこの町の中心部を流れている。

「ふう。」
僕は、橋のたもとで一息つくことにした。流れに目を向ける。
魚が見えるほどに透明な川を、鴨の親子が泳いでいく。
ふと、頭に冷たい感覚を覚えて、空を見上げると、ちらちらと雪が舞い始めていた。
「ねえ、何か見えるの?」
突然声をかけられた。少し驚きながらも振り返ると、そこには一人の少女が立っていた。
背は僕より少し低いくらい。紺色のコートに薄茶色のセーターに、チェックのスカートをはいている。
年は、僕より少し下、高校3年生くらいだろうか。
「あ、いきなり話し掛けてごめんなさい。なんかずっと川を見ていたから、何かあるのかな?と思って」
どうやら、じっくり観察しておびえさせてしまったらしい。
「いや、こっちこそじろじろ見ちゃっててごめん。」
あわてて誤る。すると、少女は微笑んで、
「いえ、気にしてませんので。あ、ごめんなさい、いきなり声をかけておいて自己紹介もしてませんでした。
 私、広山夕菜といいます。」
そういえば僕も自己紹介がまだだった。
「あ、僕は西野弘明。これも何かの縁かな?よろしく、広山さん。」
「あ、夕菜でいいですよ。その代わりわたしも、弘明さん、でいいですか?」
「ああ、別にいいよ。それじゃ、夕菜、ここじゃ寒いしせっかくだから商店街のファーストフード店にでも入ろうか?」
「あ、それ私も考えてました。それじゃ、意見一致ということですね!早速いきましょう。」

僕らは商店街の中ほどにあるファーストフード店、バーガーMにはいった。
「へえ、それじゃあ、あの大学に通ってるんですか。」
「うん。昔この町に住んでたことがあってさ、今まで一人暮らしとか大学になれるのとかで大変だったから、
 なんとなく町を歩くってなかったんだ。それで、ちょっと歩いてみようかな、と思って。」
本当は目的があるのだが、彼女には関係ないし、何か愚痴を言うようなので黙っておいた。
「それじゃあ、私もそれに付き合っていいかな?私も今日で授業終わりだし、いいかな?
 ついでだから町を案内してあげるよ。あんまりあちこちいってないんでしょ?」
「ああ、それじゃあ、お願いしようかな。」

そして、二人のどことなくおかしな町めぐりが始まった。
夕菜は案内してあげる、といっただけあって、なかなか良いガイド振りを発揮してくれた。
しかも、よくある観光スポットではなく、生活に根ざした「知る人ぞ知る」的な場所ばかりだ。
よく考えてみると僕もいったことあるような気がするから不思議だ。
それを言ってみると夕菜は、
「そっか・・そんなもんだよ。」
と、なぜかさびしそうに答えた。
「じゃあ、最後にとっておきの場所に案内するね。」
「あ、うん。」

夕菜は僕を小高い丘の上に連れてきた。
ちょうど夕刻が近づいていることも手伝って、目の前には幻想的な風景が展開されている。
さながら雪と夕日、白とオレンジの世界・・。
「きれいでしょ・・」
「ああ・・」
確かに綺麗だ。しかし、何かそれ以上のものがあるように感じた。
それは、何か心の奥につっかえているもの。
・・・・・・・
・・・・
・・
思い出した・・ここは、昔、あの子と僕の秘密の場所だったのだ。
この場所を知っているのは、僕とあの子だけ・・・ということは・・・

はっとなって夕菜を振り返る。
「・・やっと思い出してくれたんだね。」
夕菜はうれしそうに言う。
「そっか・・君が・・。」
「私は橋の上で弘明君見た時にすぐ気がついたのに、弘明君ぜんぜん気づいてくれないんだもん。
 ホント、ここで気づいてくれなかったらどうしようかと思ったよ。」
「・・・ごめん。」
いわれて見れば、今まで言った場所に僕は全て見覚えがあった。単なる偶然ではなかったのだ。

「本当にごめんな。全然思い出せなくて。」
「ホント、ひどいよお。まあ、特別におまけしてディナーセットで許してあげる。」
「こりゃあ、高くついたなあ・・・」
「当然よ。私に何もいわずに引っ越そうとしたんだから。」
「言いにくかったんだって。でも、本当にごめんな。」


夜の雪が、10年間の二人間を消し去っていく・・・。
僕等は、これから、ここからはじめる。

THE END

(思いっきりべたになってしまった・・・まあ、いっか(をい)
ちなみに、物語の舞台は去年取材(?)に行った仙台市、大学は友達の通っているT北大学です。)


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